Story | 06/09/2022 10:54:40 | 2 min 読み取り時間

善きトロール、気候変動に立ち向かう

Lara McCoy

巨大トロールを次々に生み出すリサイクルアーティストThomas Dambo氏:「捨てるゴミあれば拾うゴミあり」を語る

Thomas Dambo氏は、コペンハーゲン郊外のスタジオの中庭で、人類が地球にもたらす大惨事にトロールたちがどう対処するのかを考えているところです。

「211年に一度、トロールたちは大きな集会を開き、人類の現状について話し合います。歴史を振り返ってみても、人々は何度も動物や地球の生命を危険にさらしてきたことを知っているからです。」とDambo氏は言います。「今、人類は再び道を踏み外してしまっている。しかし、彼らがすべきこととは何だろう」

廃材を使った巨大な彫刻を制作しているアーティスト、Dambo氏は、「Troldefolkefest」と名づけられたこのトロールの集会を題材にした展示を近々行う予定です。世界のゴミ問題の深刻さとその可能性とを示す一つの方法だとDambo氏は言います。

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新たなトロールの制作を計画中のリサイクル活動家Thomas Dambo氏

何もないところから何かを生み出す

自らをリサイクル活動家と呼ぶDambo氏ですが、不要になった素材や廃材の新たな用途を見出す能力は、作品だけにとどまりません。自宅兼オフィスの家具や什器にも、余った木片やスペアパーツを再利用しています。

廃材だけで作品を制作するというDambo氏のスタイルには、彼の価値観や人柄がよく表れています。

「両親のおかげで、善良な市民として、自分のことや自分の夢だけでなく、もっと広い視野で世の中のことを考えるように育てられました」とDambo氏は言います。「とてもせっかち者でもあったんです」と付け加えます。

 

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Dambo氏は、子どもの頃、思いついたことをすぐに行動に移せないことが一番嫌だったと言います。例えば、アクションフィギュアで遊ぶのに要塞を作りたいと思ったら、母親から材料を買いに連れて行ってもらうのを待つよりも、すぐに作りたくて、あり合わせの材料をかき集めたそうです。

Dambo氏は、「後に、実際に材料を買えるお金を手にするようになってから、買った材料を使っても、あり合わせの材料よりも良いデザインになるわけではないことがわかったんです」と言います。「そして、どんなものでも、デザインの方法はいくらでもあることに気付いてしまったんです。何かを作ろうとするときに、わざわざ特別なものを買わなければならない理由なんかあるのかな、ってね。」

 

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また一つ、名作が生まれようとしている

最適な素材を見つける

ほとんどの場合、Dambo氏は作りたいものを決めてから材料を探しに行きますが、時にはその逆のパターンもあります。有名になるにつれて、彼のもとには廃材が集まってくるようになったそうです。大量に手に入ったのは、コペンハーゲンの地下鉄の壁にかかっていた広告パネル。

新しいスタジオの外壁に使えば、面白い模様になると考えているそうです。Dambo氏は、余った輸送用パレットや、損傷や欠陥があって売り物にならない木材を使ってトロールを作ります。本人いわく、どんな材料でも使うけれど、好んで使うのは木材とのこと。

Dambo氏は、「木材こそ世界で最も優れた建築材料ですよ」と言います。「大地から勝手に生えてきてくれるんですから。何も汚すことなく、毒性を気にすることなく作業ができる。しかも、分解されると栄養分が増えるなんて。木材は、本当に素晴らしい素材です」

 

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Dambo氏はこれまでに、7カ国で81体のトロールを制作している

トロールで話題をさらう

Dambo氏は、より持続可能な未来への道を人類に示すためにトロールのコミュニティを作ろうとしたわけではありません。もともと、このプロジェクトの焦点は、ゴミを利用していかに魅力的なものを生み出せるかということにありました。

Dambo氏は、「最初の2、3体を制作した時点ではトロールとは呼んでいなかったんです」と言います。「僕にとっては、それぞれが独自のストーリーと生を受けた、リサイクルされた大きな存在にしかすぎなかったんです。でも、みんなが何か呼び名が欲しいっていうもので、結局トロールで落ち着いたっていう感じです。」

小さな木片から作られるトロールは、簡単な工具さえあれば組み立てることができるため、できるだけ多くの人に制作に参加してもらえます。毎回、数十人のボランティアがトロールの組み立てを手伝ってくれるそうです。

 

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トロールには、一体一体に個性があります。
 

また、トロールを題材としたおかげで、素材を無駄なく、すべて使いこなすことができるそうです。

「ジャスティン・ビーバーを作っているわけではないので、『似ていない』などと言われることもありません。作っているのは、トロールなんですから。どんな見た目にするかは私が決めること。やりたいって思えば、5本腕にすることだって、1つ目にすることだってできますよ。何でもあり。片方の腕がもう一方より長い理由は、中に入れるのに十分な長さの建築用の梁を見つけたってだけで、どうでもいいことなんですよ」とDambo氏。

Dambo氏はこれまでに、7つの国とアメリカの8つの州で81体のトロールを制作し、それらの作品を主に人里離れた簡単には見つけられないような場所に設置してきました。現在、82体目を制作中です。このトロールを使って、人々にいつもとは違う形で自然を体験してもらいたいと考えています。

「自然とアートをうまく結びつけて、私の彫刻を探しに行ってもらおうと思っているんです。それが自然の中に飛び込むきっかけになりますから。多分、彫刻がなかったら、田舎のちょっと怪しい森にわざわざ足を運ぼうとは思わないですよね。でも、現地に行けば、嫌でも自分の感覚ってものが解放されてしまうわけで、そこで初めて自然が与えてくれるあらゆるものに気付いてもらえるのではないかと思います」とDambo氏。

 

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トロールの存在価値は、アートの域をはるかに超えて

未来の素材

トロールはソーシャルメディアで人気者になりましたが、たまたまそうなったわけではありません。Dambo氏は、バイラルマーケティングについて学部の卒業論文を書いたほど、ソーシャルメディアが持つ力を理解しており、その上手な活用法も心得ているのです。彼の作品は、特にこのソーシャルメディアという媒体と相性がよく、ブランドやメッセージを広めるのに役立っています。自撮りをしてもらえればもらうほど、ゴミがいかに一つの形になるのかを示すことができるのです。

Dambo氏は、「私の作品がどんな材料から作られているのかを見れば、作品の意義をほとんどの人は理解してくれると思います」と言っています。「ゴミから何かを作り出すことができるということを分かってもらえればいいんです。世界は必ずしも自分たちが出したゴミで埋もれてしまう必要はありません。ゴミは、私たちが未来を築き上げるための材料にもなるんですから」

 

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Dambo氏は、ソーシャルメディアを駆使して、自分の作品を人気スターに育て上げました。

 

写真撮影:Simone Dupont

 

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