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Story | 10/22/2021 06:19:51 | 2 min 読み取り時間

木材利用による都市の軽量化

都市は大型化するに従ってより重量が増し、それがその地面に影響を与えています。新しいビルの建材をコンクリートから木材に変えることで、都市を軽量化できるでしょうか。

減量を目指す場合、大抵の人は食生活を改善して運動量を増やすものですが、人口の多い都市の場合、減量化ソリューションはそう単純ではありません。住民や自動車から建物やインフラ、そして食料、水、燃料等の消耗品に至るまで、都市の重量化は世界各地で進んでおり、アメリカ地質調査所の地球物理学者であるTom Parsonsは、自身の故郷であるサンフランシスコ市の重量が、公共施設、道路、橋を除いても1兆6000億キログラムに上るという試算を最近発表しました。およそ2億9000万頭のアフリカ象に相当する重さです。

2050年までに世界人口の7割近くが都市部で暮らすようになると見られており、各国の都市の重量化は様々な環境的および社会的な課題を生んでいます。従来の建設資材から木材に変えることで状況は改善するでしょうか。

都市の重量化が環境に及ぼす影響

ひとことで言えば「地盤沈下」です。地盤沈下とは、地下の動きが原因で地面が沈む現象のことです。これには自然的なものと人為的なものの両方があり、自然的なものの例として水の移動が引き起こす地下洞窟の形成が挙げられますが、地下水の採取や都市化等、人間活動によって生じるケースが増えています。「大きな建造物を建てたら沈下することは避けられず、その深さは決して小さくありません[20~30 mm以上]。しかし一旦沈下すると、その時点で一定の状態が保たれます」とParsons氏は述べています。「しかし、土壌が粘土質であればさらなる沈下が継続し、それが永久に続いて建物が沈下し続ける可能性もあります」

デルタ地帯に位置していることに加え、海面上昇およびそれによって生じる洪水に対する脆弱性を抱えているサンフランシスコのような沿岸都市にとって、これは特に問題です。たとえば、サンフランシスコのミレニアムタワーは過去10年間に400ミリメートル以上沈下したと試算されています。一方インドネシア政府は、過去20年間で2メートル以上の沿岸部の沈下を経験し、ジャカルタから首都を移すことさえ検討しています。「湖や海岸等の汀線に近い場合、事態はさらに深刻です」とParsons氏は言います。「しかし高地の都市であっても、地盤沈下が起きれば水系模様が変わり、下流に影響を及ぼします」。

ミクロで見た場合、土台にズレが生じることで建物や人家が損傷を受ける可能性がありますが、マクロで見た場合、洪水、湿地帯の汚染、土壌浸食を引き起こすおそれがあります。そしてこのような想定外の被害への対策が、環境的影響の悪化につながることもあり得るとParsons氏は警告しています。「[洪水から守るために]防波堤を設ければ、海の侵食作用が別の場所に移動します」と彼は言います。

木材を建材に採用することで、都市の沈下を鈍らせることができます。写真:Di/Unsplash

木材利用という解決策

地盤沈下を元に戻すのは不可能であり、最善の対策は予防策を講じることです。海岸地への移住傾向が高まっている現状において、新しい移住者向けに必要となる住居は6割がまだ未建設であると推定されており、建築物に注目が集まっています。現在はコンクリートが建材の中心であり、コンクリートの製造は世界のCO2排出量の8パーセントを占めています。一方、木材は炭素を吸収し、従来の建材よりも軽量で、製造と組み立てに要するエネルギーと時間を削減できます。

「建設における木材の利用には、明らかに環境的な側面があります」と、UPM Timberのシニアバイスプレジデントである Antti Koulumiesは述べています。

「木材以外の建材(コンクリート、鉄鋼、アルムニウム等)はエネルギー消費量が非常に多く、カーボンフットプリントも大きくなります。木材はその逆です。木材は炭素を吸収し、建物に利用すると長期間貯蔵されます。そして空気の品質や快適性といった側面も見逃せません」
Antti Koulumies

さらに、森林の伐採と植林を定期的に繰り返すことで、木材の炭素吸収能力が向上します。「森林からの炭素を管理する最善の方法は、手つかずの状態で永久に放置しないことです。森林は時間の経過とともに自己再生し始めます。自然腐食、暴風雨による被害、害虫、森林火災などが起き、ポジティブな効果が全て失われてしまいます」とKoulumies氏は付け加えます。「一方、持続可能な形で森林から木材を伐採して炭素貯蔵に用いれば、長期的に見て炭素吸収量は増えることになります」

また、強度を高め、木造アパートに使用されるクロスラミネート木材等、木材には様々なグレードがあり、用途に応じて最適化が可能であるため、木造建造物のほうがカスタマイズ性とデザイン性に優れている、とKoulumies氏は述べています。

一方、「木造建造物は柔軟性が高く、強力な揺れの間しなやかに曲がる」ため、地震の多い地域では木材建造物のほうが良いのではないかとParsons氏は考えています。これに対してKoulumies氏は、「確かにその通りです。当社の日本のお客様の多くは、耐震性能を理由に木材を建材として採用しています」とコメントしています。

建材として考えた場合、木材はコンクリート、鉄鋼、アルミニウムよりも遥かに優れた軽量性と柔軟性を備えています。写真:Josh Olalde/Unsplash

軽量化された都市への移行

高さ85メートルのオスロの木造ビルMjøstårnetから、東京で構想が進んでいる高さ350メートルの木造タワーまで、都市のスカイラインはじきに、素材的にも環境メリット的にもまるで林冠のようになるかもしれません。しかし、まずは認知度とコストの問題を解決しなければならないとKoulumies氏は考えています。「5年前や10年前であれば、大抵の人は建材を選ぶ際に環境的な側面よりもコストやデザイン性を重視していました」と彼は言います。「これはより重視されるようになりましたが、業界として、木材の資材としての良さを立証するための分析や、木の伐採が炭素放出につながるといった誤解を正す取り組みを続ける必要があります。木材は、完全に再生可能な資源です」。

「都市の森林」が将来現実になるかどうかは、時の経過を待たないとわかりません。それまでの間、都市がスポーツジムに入会する見込みは薄いですが、建設資材をコンクリートから木材に切り替えることで減量を実現できるかもしれません。

テキスト:Beetle Holloway

メイン写真:Casey Horner/Unsplash