手頃な価格の住宅:21世紀の課題

手頃な価格の住宅を建築し維持することは、今世紀の世界最大の課題となりつつあります。

現在、世界人口の半数以上となる40億人以上の人々が、都市部に住んでいます。2050年までに、その数は64億人に増加し、その約半数はスラムに住むことになります。

これは、第三世界の問題と考えられることが多いですが、カリフォルニア大学バークレー校環境設計学部教授のMary Comerio氏は、同様の問題が北米やヨーロッパでも確認されていると指摘しています。

手頃な価格の住宅の不足は、個人の生活と社会全体のあらゆる側面に影響を及ぼしています。「個人については、手頃な住宅の不足により、家計に負担が重くのしかかっています。住宅は、人々が社会での足場を築くために最初に手に入れなければならないものの1つです。世帯収入の30 %以上を住宅費用に費やすことになれば、他の部分に赤字が生じることになります」とニューヨーク州立大学バッファロー校建築学科教授のRobert Silverman氏は述べています。

社会全体については、手頃な価格の住宅の不足により低賃金労働者が都市部の郊外に追いやられた場合、人々は最終的に「20年落ちの車で長時間通勤し、環境に悪影響を与えます。これはすべて、手頃な価格の住宅の不足がもたらす余波です」とSilverman氏は述べています。

この問題の重大さを考慮すると、手頃な価格の住宅の建築プロセスのあらゆる部分で革新が必要です。

 

現場での建築の代わりに、工場でのモジュール建築が活用されつつあります。写真:UPM

労働力と建築コストを減らす設計

設計面から見ると、モジュール建築は建築コストを確実に削減できます。「サンフランシスコ湾岸地帯では、カリフォルニア州ヴァレーホのメア・アイランドで組み立てられたアパートの部材を使っているプロジェクトがあります。その部材は、湾岸地帯での通常の建築コストよりも1平方フィート当たり300米ドル安いのです」とComerio氏は述べています。「通常の建築費用の3分の1です」

ベイエリア評議会公共政策担当シニアバイスプレジデントであるMatt Regan氏は、Factory OS社が組み立てたこの部材を使用することで予算が30 %削減され、従来の現場での建築よりも工期が20 %短縮されることを示すデータを紹介しています。「これが建築の未来の形です。必ずしも万能薬ではありませんが、手頃な価格の住宅やホテルを建築するために利用できる手段です」と彼は締めくくりました。

建築業者が試行しているもう一つの経費削減戦略が、工場組立住宅です。「従来、組立住宅は、単一ユニットの住宅が多かった」とSilverman氏は述べています。「今では、多くの部分が現場の外で建築され、平床式トラックに積み込まれます。住宅用のトラスや他の部材がワイヤー接合で組み立て済み、というケースが増えています」

パネル工法を用いれば、壁や床、天井、屋根を建築現場に搬入する前にあらかじめ製造することができます。この方法により、時間と人件費を大幅に削減することができます。

持続可能な木材は、住宅費用の抑制に役立ちます。写真:UPM

より安く、耐久性の高い建築

設計やプロセスの変化に加えて、資材の革新も、手頃な住宅の実現には必要不可欠です。場面によってはコンクリートや鉄が適切なこともありますが、主要な建築資材として長い歴史を誇る木材は、手頃な価格の住宅の開発に不可欠な要素です。

「私たちは今では、コンクリートの上に木造の5~6階建ての建物を建築しています」とComerio氏は述べています。「木造建築の革新において、これらは非常に注目に値します。高層階の建築は、大きな革新です。私が駆け出しの建築家だった頃は、3階建て以上の木造の建物など考えられませんでした」

Housing Oregon取締役のBrian Hoop氏は、高層の木質系住宅用の新しい建築資材として、クロス・ラミネイティド・ティンバー(CLT)の可能性に注目しています。Hoop氏は、この技術が「手頃な価格の住宅の開発業者が取り入れるにはまだまだ初期段階」にあることは認識していますが、この資材に大きな可能性を見出しています。「多くの人々がこれについて話しているのを聞いていますし、利益追求型の開発業者は何社かこれを試用しています」

都市部の継続的な人口増により、都市中心部から妥当な通勤距離圏内にある手頃な価格の住宅需要が増加しています。そのため、すべての人々が手頃な価格の住宅を手に入れることができるよう、資材、設計、プロセス、規制の革新を実現することが極めて重要です。

文:Lorelei Yang

 

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