世界的リーダーから学童までの全員が団結して、気候変動と闘っている一方、大手ブランドも事業の持続可能性を改善すべく取り組んでいます。林業での取り組みは、持続可能な木材利用などの形で、他の業界にも波及しています。
スウェーデンの世界最大手の家具量販店イケアは、2017年に「森林管理に取り組んでいる国の持続可能な調達先から100 %の木材を仕入れる」目標を達成したと発表し、明確なメッセージを発信しました。イケアが世界の木材供給の1 %を消費していることを考慮すると、この挑戦は適切で、しっかりと計画されています。持続可能性目標を達成できれば、これに取り組まない言い訳はできなくなります。
さらに、イケアは「2020年までにリサイクルまたはFSC認証を受けた木材と定義された、持続可能な調達先から木材、紙、段ボールを100 %仕入れる」という宣言もしています。この宣言が発表されると、世界的大手企業の森林管理マネージャーであるMikhail Tarasovは、会社ウェブサイトに以下のメッセージを掲載しました。「当社は持続可能な森林管理を採択し、推進しています。この取り組みを通じて、他社にも影響を与え、森林破壊を食い止める重要な任務に貢献しています。」
他の代表的なブランドもこの取り組みに倣っています。マクドナルドは、クロスラミネート材(CLT)を使って、シカゴにフラグシップ店を新たに建設しています。この板材は、低価格の木材をリサイクルし、コンクリートと同等の構造強度を持たせたものです。キングフィッシャーは、2020年までに全事業で木材と紙の100 %を責任ある調達に切り替えるよう取り組んでいます。カルフールCEOのAlexandre Bompardは、「森林破壊ゼロソリューションを標準とする」目標を明らかにしています。カルフールの森林保護ポリシーには、森林、生物多様性、現地コミュニティの権利を保護することが盛り込まれています。
持続可能な木材の台頭
有名なビジネストレーナーのKate Zabriskieは、「顧客の認識が貴社の現実」と指摘します。消費者意識の向上に伴い、顧客は各企業が世界を救うためにどれほど貢献しているかに関して、正確な情報を入手したいと思うようになっています。Stanford Social Innovation Reviewによると、CEOの90 %以上が事業成功に持続可能性が不可欠と確信しており、世界的大手ブランドは、有害な物質を排除する真摯な取り組みを一般に認知される必要性を自覚しています。
各企業は、持続可能な木材の導入と関連規制の順守を重視しています。たとえば、世界自然保護基金(The World Wildlife Fund)はさまざまな調査結果を検討し、持続可能な木材が企業の評判と事業の安定に貢献することを確認しました。日用品の多くが木材やパルプを原料とするため、専門家は、継続的な啓蒙活動が天然資源、特に森林に良い影響を与えると指摘します。グローバル・キャノピー・プログラム(The Global Canopy Programme)は2014年に、世界の162社(各社の市場価値は計3兆2,400億万米ドル)が森林破壊ゼロのサプライチェーンに取り組んでいると報告しています。
研究者のRajat PanwarとEric Hansonによると、森林で生産される木材が「比較的人間が利用していない天然資源と一般的にみられている」ため、持続可能な木材はある意味、概念として始まりました。
持続可能な方法で管理される森林では、可能な限り自然のかく乱と再生パターンを模しており、常に再生可能で、健全かつ持続可能な木材調達源が確保されます。持続可能な方法で管理される森林では、生物多様性と現地コミュニティの幸福も促進されます。
森林認証の役割
持続可能に管理される森林から木材を確実に調達するために、木材と木質繊維の調達源を遡ることができるとして、各企業は認証を信頼しています。世界的に、2つの機関が森林認証を実施しています。この2機関は通常、FSC®とPEFC™の略称で呼ばれています。認証により、不法に伐採した木材や保護価値の高い森林からの木材が原材料プールに入らないよう防ぐことができます。
認証のベースとなっているのは、需要が枯渇すると、森林が自然のまま保護される可能性が高まるという考え方です。国際連合欧州経済委員会(The United Nations Economic Commission for Europe)は2018年、認証を受けた森林面積は、2016年の4億2,770万ヘクタールから2017年には4億3,140万ヘクタールへと増加したと報告しました。
WWFによると、成果が得られているにも関わらず、進展は遅れています。2019年の木材スコアカードレポート(Timber Scorecard report)によると、持続可能な木材に取り組む企業が目標を達成している一方、「業績の低い企業は取り組みも遅れて」います。つまり、持続可能な木材にすでに取り組んでいる企業は成長軌道にある一方、持続可能性に取り組んでいない企業は、現在も業績が低いうえ、さらに遅れを取っています。
Panwarによると、「認証は、規制施行が遅れている国の森林基準の引き上げに貢献していますが、それほどの成果は達成されていません。西洋諸国では、林業が健全に機能しているため、認証導入が進んでいます。」
言い換えると、企業と同様、規制がしっかりと施行される文化が根付いている国では、持続可能な木材を推進する認証がうまく機能している一方、規制が施行されていない国では、認証の導入も遅れています。
協力の必要性
では、大手ブランドはどのように持続可能性への取り組みを継続し、天然資源への影響を最低限に抑えているのでしょうか?
UPM TimberのDirector Mikko Hyvärinenによると、今求められているのはより高い責任感、ならびに一貫性のあるグローバルな認証システムと協力です。「全企業が持続可能な認証取得を実証すべきです。そのためには、認証への協力が必要です。協力を通じて、この分野での重要な取り組みを阻害する認証の競合を防ぎ、施行までの時間を短縮することができます。」
UPMは、木材貿易連合(Timber Trade Federation)、英国のEU木材規制(European Union Timber Regulation)など、さまざまな規制に参加しています。また、PEFC森林認証プログラムやFSCを通じて、独立系認証にも参加しています。しかしHyvärinenは、企業責任のアイデアを取り入れている点が極めて重要と言います。「弊社では、各種環境ツール、責任ツール、ならびにサービスを開発して、パートナーに必要な情報を提供し、理解を促進して、環境および責任目標を支援しています。」
グローバルな協力と現地の状況の理解、一貫性のある規制、企業責任と政治的行動の推進がすべて、持続可能な林業に重要な役割を果たします。大手ブランドは、持続可能性に向けて重要な進歩を遂げていますが、いつの場合にもさらにできることがあります。
私たちの未来は、持続可能性にかかっています。
文:Deborah Talbot